雨漏り
ポケモンたちにとって町の遊園地ともいえる、廃工場。時々電気ポケモンたちが機械を動かし、工場の施設を遊園地代わりにして遊んでいる。
その廃工場だが、最近、雨漏りがひどくなってきた。一部、天井が破損していて、今まで誰も直さなかった為に、雨漏りの量が多くなったのだ。
「これじゃ機械を動かせないよ。湿気で機械が錆びちゃう」
ラクライは、雨がぽたぽたと垂れてくる天井を眺めた。天井の隅に、ゴンドラ代わりのコンベアがあり、このコンベアが置かれた真上の天井が、少し破損しているのだ。時々鳥ポケモンが止まって休んでいく事を考えると、鳥ポケモンたちの重さに耐えられなくなったのだろうか。
「どうやって直す?」
応急処置として、イトマルの糸で穴をふさいでいるが、あまり長く持たなかったようだ。最初は雨を防いでいたのだが、一時間もすると、この有様。
「直すったって、材料も道具もないじゃん。人間にやってもらうしかないよ」
ジグザグマはぶるっと身を震わせる。雨漏りの水が、はねたのだ。
「でもさー、ここが廃工場になって長いんだよ? 今更人間が来てくれるとも思えないけど?」
エレキッドがバチバチと静電気を発する後ろで、ゴクリンが、雨漏りの水滴が落ちる場所で口を開け、水を飲む。
「いい水飲み場〜」
「水飲み場ったって、雨の日限定じゃん。冬になったら雪が降ってくる――」
言いかけたラクライが、ぴょんと飛び上がった!
「そうだ!」
雨漏りする箇所に、大きなバケツが置かれた。
「これで雨水が機械にかからなくて済むよ」
「でも、雨水がバケツにたまったら捨てなくちゃならないよ。台風とか大雨が降ったらどうすんのさ、あっという間に水たまるよ。それに、水を捨てに行く間に機械が濡れるよ」
ラクライのアイディアはあっけなく反対意見に押しつぶされた。
「じゃ、じゃあさ、バケツなくても雨漏りを防ぐやり方ってのを考えてよ!」
イトマルの糸に様々な木の枝やゴミをまとわせて穴をふさぎなおしたり、鉄板を置いてみたり、ポケモンたちは考えられる限り、雨漏りを防ぐ方法を試す。だがいずれも長く続かないものばかりだった。隙間から雨が落ちてきたり、落ちる雨を受け止めすぎてザバーッと穴から大量に流してしまったり。
「やっぱりぼくらじゃ手に負えないよ」
エレキッドは汗を拭った。
「人間の手を借りるしかないんじゃない?」
かつての工場の持ち主が、余暇を利用して、工場のポケモンたちの様子を見に来た。近々冬が訪れるため、古毛布など温かそうなものも持っている。そこで、工場の屋根の一部に穴が開いているのを見つけた。
早速、日曜大工の腕を披露してくれた。元々、工場の屋根や壁が老朽化した際に修繕の手伝いもしていたことから、修理は材料が揃ってから数時間程度で終わった。
ポケモンたちは、天井の穴がふさがれたことで喜んだ。雨漏りの心配をしなくて済むからだ。
「これでまた機械を動かせるね!」
しかし喜んだのもつかの間。今度は、ジェットコースター代わりのコンベア自体が壊れ、動かなくなるという事態が発生した。機械の知識などカケラも持っていないポケモンたち。
「また頼るしかないのかなあ」
壊れて、どんなに電気を送っても動かないコンベアを見ながら、ポケモンたちは溜息をついた。