日暮れ



 日が暮れかけると、ポケモン渓谷はオレンジに染まる。
 全てがオレンジ色に染まって、とても美しい光景。今日は雲ひとつない空で、その美しさは更に空にまで広がりを見せている。
 西の空に、傾きかかった夕日がある。これからゆっくりと沈んでいこうとしているのだ。
「きれいだねー」
 湖に映る眩しい夕日。水面に波紋はなく、丸い夕日をそっくりそのまま映し出している。
 シャワーズとタネボーは湖の側で並んで座り、湖の夕日を見ている。実際の夕日は眩しいので直視できないのだ。
 毎日の日課の一つが、この夕日の観察。見ているだけで、十分綺麗なこの夕日。いつまでも眺めていたくなる。
「きれいだねー」
「でも、もうじき沈んじゃうよね」
 シャワーズは尻尾を振る。タネボーは体を傾けて、湖面を見る。湖面は綺麗なオレンジ色に輝き、見るもの全てを魅了する。
 ふと、湖面に小波が立つ。風が吹いてきたのだ。風は優しく草木をなで、湖面の夕日をゆらゆらと揺らめかせる。
「いい風だね。明日はきっとあったかい日になるよ」
 頭のてっぺんにある突起で風を感じ取り、タネボーは目をくるくるさせる。
 まだ西の空に浮かんでいたはずの眩しい夕日はゆっくりと沈んでいく。それに伴って辺りは少しずつ夜の帳で覆われていく。東の空に、月が現れた。帳に星の飾りが現れて、夜空を彩る。西の空には赤い光が残り、このころには、地平線へ落ち行く夕日を直視しても大丈夫。
「見てると綺麗だけど、沈むと寂しいよね」
「うん」
 風はそよそよと吹いてきて、木の葉を何枚か飛ばしていく。空を舞い散る木の葉は、ゆっくりと湖の上に落ちていく。湖は白とオレンジから、少しずつ濃いオレンジと赤に変わる。小波が湖面をなで、夕日の姿はもう湖面に映らない。しかし、まだ、半分だけ空に顔を出した夕日が残っていた。もう輪郭を直視できるほど力が落ちている。赤い球体は、のろのろと沈んでいった。
 夕日が落ちたあと、西の空には赤い光だけが残る。しかしそれもやがて、夜の帳に覆われてしまうだろう。最後に、月の光が明るく渓谷を照らすのだ。
 完全に夕日の光が消え、夜の帳が完全に西の空を覆いつくした。美しい光は湖から失われ、月が南の空に昇るまでは湖面は光を失う。
「沈んじゃった。ちょっと寂しいね」
「うん」
 シャワーズとタネボーは、日没後もしばらく湖の側に座っていた。
 やがて、シャワーズが言った。
「木の実、採りに行かない? おなかすいちゃった」
「行く」
 シャワーズとタネボーが木の実を探しに湖から去った後、月の光が湖面を照らす。白く、透き通るような優しくて柔らかな月が、静かに湖面に映し出された。