影遊び



 日が暮れてくると、影が伸びる。昼間はあまり伸びないが、夕暮れになると、影がだんだん伸びるのだ。
 木の実を食べに行く途中、夕日に照らされた岩壁に影が映るのを見たポケモンたちは、新しい遊びを思いついた。
「わーい、影だ影だ!」
 ポケモンたちは、自分の影を岩に写して、岩が自分と同じ動きをするのを楽しんでいた。岩に映る影達は、その主の動きをそっくりそのまま真似をして、伸びたり縮んだりしていた。木々の影も岩壁に映し出され、風にそよぐ枝と葉の影たちが、同じく伸びたり縮んだりしている。ポケモンたちはそれも面白がっていた。飛び上がっては、影の枝葉を掴もうとしている者もいる。
「ねえー、みんな何してんの?」
 ムウマが現れる。いつもは夕方から来るのだが、今日は少し早めに現れた。 「影であそんでるの:
 誰かが答える。ムウマは、皆が影を写して遊んでいるのを見ると、飛んでいる自分も負けじと、低空飛行で壁に影を映した。ちょうど影が最も伸びる頃であったため、ポケモンたちの影を圧倒する巨大な影となった。突然岩陰に映し出されたムウマの影に、ポケモンたちの影が飲み込まれた。
「わっ、誰の影? 誰の?」
 ポケモンたちが慌てると、ムウマが背後から笑った。
「やったー、オイラの影が一番でっかいぞー!」
 けらけら笑うムウマ。ムウマの巨大な影に驚いた皆は、負けじとばかりに一斉に自分の影を大きくしようとする。背伸びをしたり、飛び上がったり、毛を精一杯逆立てたりと、色々努力した。
 結局その勝負に勝ったのは、ドンファンであった。他のポケモンよりも体が大きいため、後ろ足で立ち上がって長い鼻を伸ばせばそれだけ影が伸びるのだ。
「あっ、でもさ、肩車すれば、もっともっと伸びるんじゃない?」
 誰かの提案で、ポケモンたちは次々に肩車を始める。肩車と言っても、土台となるポケモンのうえに次々と軽いポケモンたちが乗っていくだけなのだが。
 ドンファンを土台として、コータス、グランブルが乗る。その上にドゴーム、ドンメルが乗る。その上にキモリ、ピカチュウ、イーブイが乗る。更にその上にゴニョニョ、ピチュー、ソーナノが乗る。最後に、ピィとププリンが乗った。
 岩壁に、巨大なポケモンの影が映し出された。飛ぶポケモンたちはその周りを飛んでいる。羽や翼がその巨大なポケモンの影と重なって、影は横に大きく伸びた。
「できたー、とっても大きな影だあ!」
 ポケモンたちは皆はしゃいだ。即席タワーは微妙なバランスを保ちながらも、なんとか立っていた。
 ところが、はしゃいだ拍子に誰かがバランスをくずし、
「わああああああああああ!」
 せっかく肩車したのに、ポケモンの即席タワーはあっけなく崩れ去ってしまったのだった。