落ち葉



 秋が訪れ、町に落ち葉が舞う。
「綺麗だねー」
 イーブイは、ヒラヒラ落ちてくる落ち葉を見て、声を上げた。街路樹は落葉樹ではないため、あまり落ちてこない。公園から、風に乗って色々な葉がやってくるのだ。木の色づいた葉を見るのも楽しいが、風に舞う落ち葉を見るのも楽しい。
「でも、あと一月もしたら、全部落ちちゃうよね」
 寂しそうに、エネコが尻尾を振る。
「落ちちゃうけどさ、落ちてくるのを眺めるのがいいんじゃないか」
 薄汚れた尻尾を振りながら、イーブイは、空から風に乗って舞い降りるイチョウの黄色い葉を咥えた。
「赤とか黄色とかさ、こんなにきれいなんだ。見なくちゃ損だよ」
「そーね」
 エネコはしっぽを動かして、綺麗に色づいた葉をつまむ。緑色だったはずの葉がこんなに綺麗な赤や黄色に変わっている。毎年の事とはいえ、落葉を見るのは楽しかった。
「でも落ちたら落ちたで、ちょっと汚いかも。踏んだら葉っぱの汁みたいなの出てくるしさ」
 イーブイは、尻尾で、道を掃く。ほうき代わりの尻尾は、落ち葉をサッサと掃いて、道の隅に寄せた。
「そーねー。やっぱり、落ちてくるのが一番綺麗かもね」
 エネコは近くの木に登る。この街路樹の葉は黄色く色づいているが、色づいているだけで、葉は落ちない。
 少しずつ夕方が早くなってくる。まだ五時にもなっていないのに、空は茜色になっている。沈み行く夕焼けの明るいオレンジの光が、風に舞う落ち葉を照らす。
「公園に行こうよ。あそこなら、もっといっぱい落ち葉見られるよ」
「そーね」
 イーブイの提案に、エネコは賛同し、木から降りた。
 通行人の歩く道を少し外れて、裏通りを通り、公園に出る。
 街路樹よりもたくさんの木が、紅く、あるいは黄色く色づいている。
 少し強い風が吹いてきた。風に揺すられた枝から、ハラハラと葉っぱが舞い降りてくる。
「やっぱりきれいだね!」
 イーブイは、夕日のオレンジ色の光に照らされた落ち葉を見つめる。オレンジの光を反射して、落ち葉は美しい色に輝いた。
「やっぱり、秋はいいよね!」
 エネコは尻尾を振って、風に乗る木の葉の舞いを眺める。キラキラ光る落ち葉は、風に乗り、回り、舞い、やがてゆっくりと地面に向かって落ちてきた。しかしそれだけでは終わらず、地面に落ちても、風でクルクルと舞い上がってさらに踊りを続けていた。

 秋はまだ、もう少しだけ続く……。