水遊び



 夏を迎えたポケモン渓谷。日がな水遊びするポケモンたちで、川はいつも賑やかだ。朝も早くから、夕方を過ぎてもまだ聞こえてくる。遅いときは夜になってもまだ聞こえるのだ。
 この日は朝から三十度近い気温となり、ポケモンたちは、こぞって、川へ遊びに来ていた。木の実をもちよって、時には木陰で昼寝をして休憩して、朝からずっと遊んでいる。
 ミュウのサイコキネシス・ショーや、水ポケモンたちによる噴水のショーなど、楽しい事はたくさんある。朝から、川はポケモンたちのアトラクション会場となるのだ。

「いくぞー」
 ミュウがサイコキネシスで川の水をシャボン状に丸めて浮かせる。その中で、ポケモンたちは飛び込み、球状の水中を泳ぐのを楽しんだ。息継ぎをしたくなったら、球体から顔を出せばいいのだ。巨大な球体の中は狭いが、ミュウがいくつもの球体を作り出して、皆が遊べるほどの個数を生み出したので、皆、遊ぶことが出来た。
 遊び終わったあとは、少し休憩だ。川からあがって、たくさん敷いてある葉っぱの上に寝転がる。休憩もかねて、子ミュウの操るサイコキネシスで川の水が様々なポケモンの形に変わると、皆は一斉に拍手を送る。続いてアンノーンが目覚めるパワーを使い、川に浮かぶ水の泡を次々に空中に浮かせては、その泡を凍らせて割る。綺麗な冷たいかけらが四方に飛ぶと、ポケモンたちはそのかけらの冷たさに声を上げるが、同時に凍った泡から虹がうまれ出るのを見て、大きな拍手をした。
「負けないぞー」
 水ポケモンたちは一斉に水鉄砲を吹き上げる。太陽の光を反射し、いくつもの美しい虹が生まれ出る。
「いやっほーい!」
 ブイゼルがアクアジェットで勢いよく水を突き進む。うっかり岩に当たりそうになったが、うまく回避した。跳ね上げられる川の水がシャワーになり、また川に降り注ぐ。その際、アクアジェットで跳ね上げられたカラナクシがまた水に落ちた。
「わー、めがまわるう」
 カラナクシは跳ね上げられ、水に落ちたショックで目を回した。ブイゼルはそれに気づき、水から顔を上げる。
「や、ごめんごめん」
「目が、回るう」
 カラナクシを引きずってブイゼルは川から上がる。
「いやー、びしょびしょだよ」
 岸辺のポケモンたちは、ブイゼルのアクアジェットで跳ね上げられた水しぶきで濡れている。
「びしょびしょって言っても、どうせまたすぐ水に入るじゃん」
 ブイゼルはふくれっ面になる。
「まあまあ」
 割って入るタツベイ。
「休憩もそろそろ終わりにしようか。だいぶ日が高く昇ってきたしね」
 昼を過ぎると、暑さは一段と増す。その時こそ、ポケモンたちが川で一番楽しく遊べる時間帯なのだ。木の実で腹ごしらえを終えると、皆はまた川に飛び込み、派手に水しぶきを上げて泳ぐ。どんなに気温が高くても、川で遊んでいるからへっちゃらなのだ。
 子ミュウが、新しいショーを考えてきたというので、休憩時間に皆、川から上がる。先日は、川の水の形を変えた。今日はどんなショーを見せてくれるのだろうか。
「いくぞ〜」
 幼いとはいえ、ミュウとしての能力は既に一人前。川の水をシャボンのようにぷかぷか浮かせた後、パチンとはじけさせ、噴水のように綺麗な弧を描かせて再び川に降り注がせる。美しい虹が、太陽の光を反射して噴水の中に現れ、皆は拍手した。
「わー、きれいきれい!」
「どう、すごいでしょ?」
 得意げな子ミュウに、皆頷いた。子ミュウは得意げに宙返りした。

 渓谷の木々にとまって、ヌケニンやテッカニンが暑い暑いと鳴いている。その間、川で皆、水を跳ね上げ、ショーを楽しみ、遊ぶ。
 ばしゃばしゃと派手に水しぶきを上げる音。ザザーと川へ水が降り注ぐ音。
「ひゃっほー!」
 誰かの声が、今日も川から響く。