秋のおやつ



「もうじき、ヤキイモの季節だよなっ」
 そう言ったのは、サンド。
 サンドは、大きなサツマイモの畑を掘り返している。
「もうじきって言われてもさ、もうその季節じゃん」
 サンドが派手に土をはねあげる傍らで、掘りたてのサツマイモをたくさん腕の中に抱えているのは、土まみれのブビィ。
「そ、だから、用意してるんだよ。皆そろそろ食べたくなるだろ、一個くらい」
「まあねえ」
 秋といえば、ヤキイモ。おやつにぴったりの、甘くてぽこぽこした食感を楽しめる食べ物だ。人間の住んでいる田舎の農家からやってきたポケモンが、ヤキイモを広めたのがきっかけであった。適当な広い場所にサツマイモを植えて、手入れをした結果、栽培できるようになった。そのため、毎年秋になると、ヤキイモを食べるのがポケモン渓谷の習慣になっていた。
「ヤキイモ楽しみなんだよね〜。あの甘さがすきなんだ。アツアツでさ、ほくほくしてさ〜」
 サンドはヤキイモについて語りながら、次々にサツマイモを掘り出していく。ブビィは、空中に放り投げられるサツマイモを受け止めては、サツマイモの山にそれを放り投げる。みるみるうちに、サツマイモは大きな山を作っていく。
「フウ。これでいいでしょ、ブビィ」
「うん。いーよ」
「じゃ、皆を呼んでこよう。ぼくらだけじゃ、運んでたら日が暮れちゃうよ」

 サンドとブビィは、大量のサツマイモを運ぶために、他のポケモンの手を借りに行った。五分ほどで、二匹は、たくさんのポケモンをつれて戻った。
 大きなサツマイモの山を見て、ポケモンたちは目をキラキラと、ヤミラミの目のごとく輝かせて喜んだ。
「わーい、おやつおやつー」
「ヤキイモだいすきー!」
「早く運ぼうよ」
 サツマイモを運ぶ先は、サツマイモ畑から少し離れたところにある小さな林。落ち葉をたくさんかき集めて火をつけ、そこでサツマイモを焼こうというわけ。
「わーい、ヤキイモヤキイモー!」
「早く持っていこー」
「わー、今年もいっぱい採れたね!」
 めいめい持てるだけサツマイモを持って、林に向かう。林では、ヤキイモ用の焚き火を焚くべく、落ち葉かきが始まっている。
「あっ、おイモ持ってきてくれたー?」
 せっせと尻尾で地面を掃いているキュウコン。九本も立派な尻尾があれば、さぞかし落ち葉かきがはかどると思われるが実はそうでもないようだ。尻尾に落ち葉がいくつも絡まっていて、尻尾を振るたびに、絡まった落ち葉が落ちていくので、いくら掃いてもあまり綺麗にはなっていない。当の本人は自分の尻尾についた落ち葉のせいで辺りがあまり綺麗になっていないことに気づいていない。ひたすら必死で尻尾を動かしている。
「もういいよキュウコン、十分だよ、ありがとう。じゃあ、おイモを埋めよう」
 サンドは広めの穴を掘って、サツマイモをどんどん埋めていき、その上に落ち葉を山と積み上げる。ブビィは、山となった落ち葉に火の粉を吹いた。落ち葉はすぐに煙を上げた。強すぎない程度に燃えた落ち葉の山を見て、ポケモンたちは喜びの声を上げた。秋の美味しいおやつが食べられるのだ、嬉しくないはずがなかろう。それに、これから気温が下がってくる。昼間とは言え、曇りの日はあまり暖かくないので、自然と落ち葉の焚き火を囲んで暖をとる。
「あったか〜い」
 やがて、いいにおいがあたりに漂ってきた。落ち葉の焼けるにおいと、甘いにおいが交じり合っている。サツマイモが焼けてきたようだ。
「いいニオイだなあ」
 早くも、ゴンベはよだれを垂らしている。今にも、自分の手で熱い灰をかきわけて焼けかけのヤキイモを掘り出してしまいそうなほど。周りにいるポケモンがゴンベを取り押さえようと身構えた。実際は、ゴンベ同様ヤキイモを食べたいのだが、焼けるまでは我慢。半焼けのヤキイモを食べてもあまり美味しくない。
 やがて、落ち葉の山は、熱い灰の山となった。サンドが灰を木の枝でかきわけていくと、中から甘いにおいと共に、大きなヤキイモがひとつ、顔を覗かせた。
「できたああ!」
 歓声。
「早くちょうだいちょうだい!」
「まあ焦らないでよ、熱いんだからさ」
 ブビィは素手で灰の中を掻き分け、ヤキイモを探す。炎タイプのポケモンなので、火傷しそうなほど熱い灰の中でさえ平気で手を突っ込めるのだ。ブビィの掘り出すヤキイモを、皆が取っていく。特にゴンベは一番大きいものを選ぶ。別に皆はとがめない。大食いのゴンベがこれだけで済むとは思っていないから。
 全員にヤキイモがいきわたる。熱々の秋のおやつを、頬張った。灰を払い落としてヤキイモを半分に割ると熱い湯気が立ち上る。程よく焼けた黄色のサツマイモは甘く、いくつでも食べたくなりそうなほどだった。
「ヤキイモおかわりー!」
 案の定、ゴンベは一番に食べ終わり、冷めかけてきた灰を自分でかきわけはじめた。
「山ほど掘り出してきたから、皆二個くらいはおかわりできるよ」
 サンドの言葉を聴くと、食べ終わったポケモンたちはめいめい灰の中を探り始めた。そして自分のヤキイモにありつき、二個目の甘いおやつを味わい始める。
「やっぱり秋のおやつは、ヤキイモが一番だよねー」
 誰かの言葉に、皆、食べながらうなずいた。