雪だるま作り



 都会はすでに年明け。正月は過ぎ、わずかな休暇を楽しんだ人々は、仕事の日々に戻っていく。
「くわああ」
 寒いので、特別に家の中にいるガーディは、大あくびした。
「お正月はいろいろ食べられるけど、あれって保存食みたいなものなんだなあ」
 いつもポケモンフードか、特製のコーンビーフをもらっているガーディにとって、おせち料理は年に一度しか食べない珍しいものであった。あまり美味しくはないが、ものめずらしさから、ガーディは毎年食べている。かまぼこやら、黒豆やら、かずのこやら。伊達巻が、ガーディの好物だった。
 まだおせち料理はわずかに残っている。かずのこを口の中でプチプチとひとつずつ噛んで潰していくのも好きなので、かずのこを探す。あった。ガーディは遠慮なく口に入れた。
 ぷちぷちと、舌でかずのこを口の中で転がし、牙でかずのこを少しずつつぶす。それが終わると、今度は伊達巻にとりかかる。甘みのわずかにある伊達巻が、おせち料理の中でも大好物。遠慮なく食べる。
「やっぱり伊達巻は美味いねえ!」

 おせちを食べてある程度腹が膨れたところで、ガーディは散歩に出た。公園へ行くと、積もった雪を利用して、ポケモンたちが雪だるまを作ったり、雪合戦をしているところだった。
 ガーディのすがたを見たポチエナが声をかけた。
「おーい、ガーディ! 一緒に雪だるま作ろうぜー!」
 ガーディは喜んでその仲間入りをした。前足で雪をこねて固まりを作り、すでに出来上がりかけている雪だるまの胴体にくっつけていく。ぶさいくな形だったが、目的の雪だるまは何とか出来上がりそうだった。
「もうちょっとだね!」
「うん。あとは、頭だけだね」
 胴体が何の形をしているのかわからないが……。
 ムチュールが自分の頭ほどもある大きさの雪だまを作ってきた。丸くこねたかったらしいが、うまくいかなかったと見え、でこぼこだ。
「うわん! もっと丸くしたいの」
「じゃ、貸してみ」
 バルキーが雪だまをこねなおす。新しく雪をくっつけていくと、やがて綺麗な球体になった。
「わーっ、すごいの! ありがとうなの!」
「どんなもんだい!」
 頭となる雪だまを載せ、今度は仕上げにはいる。近くから拾ってきた棒切れを胴体に突き刺して、腕の代わりにする。頭部には、目と口をぜひ作りたかったので、ポケモンたちは公園をあちこち探した。小石、捨てられたボール、木の枝、ごみ、一円玉。
「とりあえず、くっつけていこうか?」
 拾ったものをとりあえずくっつける。目玉代わりのボールと、小石。小石は細長いので、ぱっと見たところウインクしているようにも見えた。鼻の代わりの太目の木の枝をさすと、少しサマになった。口の代わりの赤いビニール紐は、ニッコリ笑った口の形を作ることができた。最後に、ボタンの代わりの小石と一円玉を胴体にはめこんで、雪だるまは完成した。
「やった! できたあ!」
 皆、歓喜の声を上げた。胴体は綺麗な球体とは言えないが、それでもとてもかわいらしい雪だるまとなった。
「このウインクしてるとこサイコーだよね!」
「この腕だって、かわいいよ! 手ふってるみたいだしさ!」
「鼻も高いね!」
 口々に雪だるまへのほめ言葉を出す。昼の暖かな光が、雪だるまをやさしく照らしていた。