マルク
マルクは、力尽きた。
ノヴァの上に落ちた衝撃で、壊れかけのノヴァは粉々に砕け散った。
同じく力尽きたカービィも落ちていく。だが、カービィの体は、ワープスターに拾い上げられた。カービィはそのまま、ワープスターに乗って、ポップスターへと向かっていく。
散りくずの中をただようマルクは、かすれた意識の中、一つの光を目にした。あれは、カービィの載っているワープスターの光だった。ワープスターは、ポップスターへ向かって飛んでいく。
(ボクのものになるはずだった、ポップスターへ……帰ってく……)
そう、マルクはポップスターを我がものにするはずだった。そのために、太陽と月に喧嘩させ、カービィを宇宙に誘い出してノヴァを呼びださせた。あとは、自分の願いをノヴァに伝えるだけ、それだけですべてが成就するはずだった。
だが、その野望は打ち砕かれた。カービィが邪魔をしたからだ。カービィはスターシップに乗ってノヴァを破壊した。そして死闘のすえ、カービィはマルクを破ったのだ。
ポップスターへ帰ったカービィは、ポップスターを救ったヒーローとして称えられるだろう。だが、自分はこの暗い宇宙でさびしく漂っていくだけ……。ノヴァを破壊され、ポップスターを我がものにするという野望はついえてしまった以上、マルクは敗者の烙印を押されてしまったも同然。
願いもかなわず、カービィに敗れた自分はここで、さびしく漂い続けるのか……? マルクは思った。
だが、
(カービィ、ゆるさないのサ……!)
消えていくはずの意識は急激にわきあがってきた。カービィに対する怒りと憎悪があふれ出した。力が湧いてくる。そしてその力は、周りのノヴァの散りくずを集め始める。ノヴァの散りくずはマルクの憎悪によって引き寄せられ、マルクと融合し始める。ノヴァの力が、マルクの中に流れ込んで新しい力となって行くのがわかる。
(絶対に、ゆるさないのサ!)
マルクの頭の中では、ポップスターを我が物にすることよりも、カービィを己の手で倒すという復讐に取って代わっていた。もうポップスターはどうでもいい、それよりも、カービィと再び戦うことを、マルクは望んでいた。
(まだボクは終わらない、終わらせてなるものか!)
マルクには分かっていた。またカービィが「ここ」へやってくるということを。
(カービィ、今度こそお前を倒す! ボクの手でお前を絶対に倒すのサ!)
融合したノヴァの力が、マルクを変えた。カービィに対して抱く憎悪と怒りが、マルクを変えた。
翼を広げ、マルクソウルは羽ばたいていった。
再び現れた、カービィに向かって。
「さあ、最後の勝負をするのサ!」
マルクソウルの声にこたえるかのように、カービィは、幾多もの敵を葬り去ってきたハンマーをぐっと握りしめた。
最後の戦いの火ぶたが、切って落とされた。