最終章 part1



 トラメディノ湿原でレイスの攻撃を受けて意識不明となり、湿地の魔女が作った薬で意識を取り戻してから、アユミは以前にもましてシンジのことを考えるようになっていた。別にシンジに恋情を抱いてなどいないのに、アユミは彼がまるで家族どころか自分の一部であるかのようにさえ感じているのだ。
「変ね。あれからずっとシンジ君のことばっかり考えてる……」
 空を見上げてぼんやりとしていたり、人ごみを眺めていたりと、アユミの変化にはシングも気付いていた。が、シンジに恋情でも抱いたか、同じ郷里の出身者だから懐かしがっているのだろうと考える程度だった。しかし、元気なアユミをそこまで変えてしまうシンジとは一体何者なのだろうと、疑問に思ってもいた。
 ある日、シングはアユミに問うた。シンジとはいったいどんな人物なのか、と。対するアユミの返答。彼は見た目十五、六歳の少年で、暗色の着物を着ており、腰には刀をふた振り差している。背まで届く長い黒髪を首の後ろで束ね、両の目は宝石のように赤い。そしてなにより、アユミの故郷にある家族写真には少年時代の叔父が写っているのだが、シンジは当時の叔父ととてもよく似ているのだという。
 少年期のシンイチによく似たシンジとは、一体どんな人物なのだろう。アユミから話を聞いたシングはこの眼でシンジという人物を見てみたくなった。

 シングの願いは、早くに成就した。
 オーダリア大陸の東にあるナザン廃坑。モンスターに追われて荷物を落としてしまったので拾ってきて欲しいという、機工都市ゴーグにてある旅人からのクエストを受けたアユミとシングは、クシリ砂漠を東へ抜けてナザン廃坑へと向かった。
「ナザン廃坑は案外アンデッドが多いから、気をつけよう」
「どうして廃坑にそんなのがいるんですか?」
「薄暗いし、廃坑が使われていた頃に事故死したりモンスターに襲われて死んだひとたちの怨念が渦巻いているからね。トラメディノ湿原ほどおっかなくはないけど」
「結局おっかないんじゃないですか!」
「この世におっかなくない場所なんて無いよ」
 さいわい、旅人はナザン廃坑の外で荷物を落としたので、探索のために廃坑の内部に入らなくてすみそうだった。
 そんなわけで、ゴーグでチョコボをレンタルして北の小さな砂漠を抜けて鉱山の入り口にたどり着くと、アユミたちはチョコボを岩につないだ後、山の周りから荷物をさがすことにした。
 今、太陽は南の空にある。より凶暴なモンスターが出現する合図でもある日没までに荷物を探し出そうと決め、さっそくクエストを開始する。クエスト用紙には「もしすでに盗賊に荷物を奪われたりモンスターに滅茶苦茶にされていた場合も報告してください」と記されていたので、とにかく荷物の残骸だけでも探し出さなければ。
 荷物は案外簡単に見つかった。クエスト用紙にも書いてあった「なくした荷物」とは、行商人用の大きな鞄。モンスターの爪と牙がいたるところについていて、中身も少し傷がついている。
「さてと、そろそろ戻ろうか――あれ」
 シングはきょろきょろしてアユミを捜した。
 アユミは少し離れたところでぼんやりと遠くを見ている。
「アユミさん、どうしたの」
 シングの問いかけに、アユミはハッとして彼を振り返る。
「え、何か言いましたシングさん?」
「そろそろ戻ろうって言おうとしたんだけど、いったいどうしたの? なんだかぼんやりしてるけど」
「あっちから」
 言いながら、アユミは腕を伸ばしてその方向を指した。
「何だか懐かしい気配を感じるんです」
「懐かしい気配?」
「はい、上手くいえないんですが……近くにいるって、会いたくなってきて……」
 そのままフラフラとアユミは歩き出す。シングは奇妙に思いながらもついていく。
「一体どうしたの、アユミさん」
「ほんとに、わかんないんです。でもこの先に会いたい人がいるって……」
 心ここにあらずといった声。アユミの奇妙な答えを聞き、シングはますます首をかしげた。しかしアユミは操られている様子はない。廃坑の外に、心を操ったり魅了のまじないをかけたりするモンスターはいないはずなのだから。だが、そのモンスターがいるのならそいつを操ってアユミを正気に返らせればいいだけだ。盗賊の群れならば、以前のクエストでおまけに貰ったダークマターを放り投げて目潰し代わりにし、アユミの手を引っ張って逃げればいい。
 山すそにそって西へ向かう。そこは緩やかな坂のある岩場で草地がほぼなく、地面は荒れていて、ゴツゴツした岩が地面から突き出て歩きにくくなっている。時折ウルフの子供の群れがキャンキャンと声を上げながら、うまく飛び移れずに坂をズルズルと滑って落ちていく。
 そのキャンキャンというやかましい声が、獰猛なガウガウという声に変化したのはまもなくのこと。シングはその声から、誰かがウルフの縄張りを荒らしているのではと推察した。
「アユミさん。ウルフたちが――」
 シングは注意を促したが、アユミは聞いた様子もなくそのまま歩いていく。仕方なくシングは後を追った。
 やがて向こうにひときわ大きな岩場が見えてきたが、ウルフの咆哮もより大きく激しく聞こえてきた。どうやらこの向こうに、アユミの目指すものがあるらしいが……。
 アユミとシングはそろって、岩陰からこそっと岩場を覗き込んだ。
 岩陰から離れたところでは、ウルフの群れが標的を囲んでいるのが見える。しかし彼らは威嚇の鳴き声をあげるばかりでいっこうに攻撃しようとしないので、標的は一体誰なのかと、隠れている二人はそろって、岩陰から身を乗り出した。
「あっ」
 その声を上げたのはどちらであったか。
 唸り声を上げて威嚇するウルフの群れに囲まれているのは、ひとりのヒュム。それを見たアユミの一声、
「シンジ君……!」
「えっ」
 その言葉にシングは驚き、より目を凝らしてそのヒュムを見つめた。
 年のころ凡そ十五か十六。背まで伸びた長い黒髪をたばね、アユミと同じく異国の着物を身に付け、腰の帯にはふた振りの刀を差している。
「あれが、シンジ……?」
 ウルフの群れに囲まれているのに、彼は刀を抜きもせず、群れを見渡すばかりだ。そんな無防備な彼を、ウルフは誰も攻撃しない。
 不意に、シンジが何やら呟いたようだ。すると、ウルフの群れは急に怯え、尻尾を巻いて四方八方へ逃げていく。
「な、なんだアレ? 一体何をしてウルフを追い払ったんだ?」
 シングは目の前の光景が信じられない。魔獣使いはモンスターを一時的に操って使役できるが、ここまで怯えさせることはできない。それなのにシンジは、わずかな言葉だけであそこまでウルフを怯えさせたのだ。
 ウルフの群れが散り散りに去るのを見送ったシンジは、アユミたちの隠れている岩陰に背を向けて歩き出す。
 その背中を見たとき、シングは概視感を抱いた。
 少年の、あの歩き方は……。
 一方、アユミはシンジがこの場を離れると気付き、急にいてもたってもいられなくなって、岩陰から飛び出し、走る。
「シンジ君!」
 呼ばれた方は、足を止めて振り返った。少年の顔を見たとき、まだ岩陰にいたシングはアッと驚きの声を上げた。血潮のように赤い瞳と年齢相応の若さを除けば、確かにその顔つきは、かつてのクランリーダー・シンイチに良く似ていたからだ。
「アユミさんの言ってた通りだ……確かにリーダーに良く似てる……」
 一方、シンジの元へ駆け寄ったアユミは、
「よかったシンジ君、また会えて!」
 その挨拶を皮切りにどんどんまくしたてた。
「ねえ、聞いてくれる? 私ね最近あなたのことが気になって仕方なかったの。でもあなたに恋したわけじゃなくて、無性に気になってしかたないの! なんだかあなたがすごく懐かしい感じがしちゃって、あなたが近くにいるってわかるといてもたってもいられなくなったのよ。これって変なことかしら?」
 アユミのしゃべりと詰め寄りに圧倒されたのか、シンジはすぐに返事をしなかった。ただその両目が異様に輝いただけだ。
「いや、そんなことは……」
 未だ岩陰にいるシングは、シンジの言葉を聞き取ったが、その訛りはまさしくアユミやシンイチと同じ東国のもの。シンイチはずっと東国の訛りがとれなかったしユトランド風に直そうともしなかったのだ。
(でも、シンジが東の国出身ならアユミさんやリーダーと同じ訛りでもおかしくないかも)
 アユミの言葉はまだ続く。
「ありがとう、シンジ君、そう言ってくれて! でもそれぐらいあなたのこと身近に感じちゃってたのよ。これっていわゆるホームシックってものかしら?」
「……そうかもしれません。では、これで」
「あっ、シンジ君?!」
「用がありますので、失礼します」
 シンジはアユミにそれ以上言わせず、回れ右して今度こそ足早に去った。アユミは慌てて追いかけたが、近くの岩壁を曲がった先で、シンジの姿は煙のように消えうせていた。

 チョコボに乗って南の砂漠を横切り、日の高い中、ゴーグの町に戻った。パブの前で今か今かと待っていたクエストの依頼人に、獣の爪と牙でずたずたにされた荷物鞄を渡す。依頼人はこれを覚悟していたらしく憤ったりはせず、しかし、しょげた顔で「ありがとうございます」と言い、報酬を払ってくれた。
 シングはふたり分のチョコボを業者に返却してから、アユミがさらにぼんやりしていることに気付いた。彼女は北をずっと見つめているのだ。
「アユミさん、どうしちゃったの。そろそろ行くよ?」 「えっ、あ、ごめんなさい……」
 混雑しはじめたパブで昼食をとってから、宿を取る。宿のおかみに湯を沸かしてもらい、それから砂漠の砂を浴びた着物の洗濯を頼んだ。
 アユミは砂や埃を洗い落とし、代えの着物に着替えたが、ずっと手がカラクリのように動いているばかりで、アユミの心はここにあらずといった調子だった。
「シンジ君……また会いたいな」
 一度会ったはずなのに、また会いたいという気持ちはすぐ募っていた。いや、シンジに恋情を抱いているわけではない。それはアユミ自身が一番良く知っている。シンジに対して胸のトキメキを感じないのだから。それでもアユミは彼にまた会いたくてたまらなくなっていた。
 一方、シングも湯を浴びてから、ナザン廃坑で会ったシンジのことを思い出していた。直接顔を合わせず岩陰から覗いただけとはいえ、確かにシンジは、かつてのクランリーダー・シンイチによく似ていた。もちろん年齢が離れているぶんだけ容姿が似なくなるのは否めないが、それ以上にシングを驚かせたのはシンジの所作だ。シンジの隙のない身のこなしや訛りのある言葉遣いは、シンイチのそれと一致していたのだ。
(同じ故郷出身のアユミさんとは所作が全く違う。東の言葉遣いや訛りは仕方がないけど、それでもあんなにリーダーそっくりな動きをするなんて、他人の空似とはとても思えないよ!)
 佩いているふた振りの刀は、柄の具合だけ見てもよく使い込まれているのがわかったが、あれもシンイチの持っていたものとよく似ている。
(リーダーの目の色は黒だった。彼のは、赤かった)
 ここ最近はファッション感覚で魔法薬を眼球に垂らして目の色を変える者もいるのだ。もしかしたらシンジもそのつもりで目の色を変えているのかもしれない。逆に、シンイチはそのテのことにはとんと疎くて、サンディが「流行を知らない石頭」と密かに陰口を叩いていたものだ。
 シンジとシンイチはいくつかの点でよく似ている。だが何よりシンイチの年齢は四十に達しているのだ、二十歳を迎えたアユミより年下であるはずがない。したがって、シンジはシンイチと同一人物ではない。
(でも、やっぱり気になるなあ)
 魔獣使いとしては、シンジが何をしてウルフの群れをあんなにおびえさせたのかが気になる。何か術を唱えてひるませたのかもしれないが、そうだとしたら一体どんな術なのだろう。それとも同じく魔獣使いの知り合いがいて、モンスターを手なずける方法を教わったのだろうか。
 シンジ自身の口から色々と聞いてみたいものだ。
 アユミとは動機が異なっているが、シングもまた、シンジに会ってみたいと思い始めていた。


 それから七日後、フロージスにて、アユミとシングは、アイセン平原の環境保護のためモンスター討伐のクエストを引き受けた。
「おいおい、うそだろ……」
 シングとアユミは、平原にそびえる大きなモノを見上げていた。アユミの背丈の倍ほどもありそうな巨大な植物ラフレシア。これはあきらかにモンスターの一種だ。毒々しい色の巨大な花を頭上に咲かせ、幹はヒュムの胴ほども太く、しかも花の周りにはコカトリスの羽毛や骨、アントリオンの破片が散っている。
「こいつを討伐するの……? アントリオンやコカトリスじゃなくて?!」
 唖然としたシング。
「もしかしてこの平原の植物の頭領なんでしょうか? 今まで保護されてきたからここまで巨大に育ってしまったとか……」
 同じく唖然としながらも、アユミは推理する。環境保護団体は過剰なまでに平原の環境を守りたがり、平原に住み着くアントリオンやコカトリスの討伐クエストをしょっちゅう出している。守られすぎた植物の中にモンスターの種が混じっていて、コカトリスやアントリオンの牙にかかることなくのんびり成長していったとしたら……この巨体も納得である。
「と、とにかく何とかしないとな。こいつはまだラフレシア種にしては『かなり』小さい方だから……」
 そうは言っても、コカトリスとアントリオンを食べていた敵の強さを考えると、こいつを討伐するにはシングとアユミだけでは実力が足りない。ガードナーが現役だった頃はこの手の巨大モンスターはエンゲージ担当班総出で討伐していたのだが、シンイチほどの腕利きでも単身では簡単に倒せないのだ。ましてや同じ武人でもアユミの腕前はシンイチに遠く及ばない。
「報酬を分ける条件つきで、他に誰か連れてきたほうが良かったかな」
 そう呟きながらシングは周囲を見回した。離れた草むらや盛り土に、コカトリスとアントリオンの陰が見えるのだが、どうやらラフレシアを怖がって隠れているらしい。まあ、このラフレシアは彼らを餌にしてここまで巨大化したのだろうから、コカトリスたちが植物に喰われるのを恐れて隠れるのは当然である。
 枯れ木も山のにぎわいだ、シングはコカトリスの一匹を操った。コカトリスは彼に従って、身を潜めていた茂みの中から姿を現す。
「アユミさん、いくよ。こいつはモルボルの種を噴出するから、気をつけて! つるや花粉にもね!」
「はい!」
「コケケ!」
 アユミと、シングに操られたコカトリスは元気に返事をした。

 まだ小さいとはいえ、大型植物モンスターのラフレシアは、たった二人の冒険者には強敵であった。ラフレシアはその大きな口からモルボルの種を吐き出し、それが地上に落ちると瞬く間に小さなモルボルとなる。この小さなモルボル自体は、アユミの一太刀やコカトリスのつっつきで屠れるほど弱くて柔らかいが、とにかく数が多い。また、ラフレシア本体は複数の長い蔓を四方八方に振り回してアユミを近づけなくさせるだけでなく、不思議なかおりを周囲に撒き散らして、生まれたてのモルボルたちにさらなる力を与えてしまうのだった。
「アユミさん! 近づくにはその蔓を何とかしないと! カマイタチで蔓をなぎ払って!」
 シングの操るコカトリスが幾度もアユミを「モーニングコール」で無理やり体を動かし、彼女はカマイタチを何度も繰り出して、ラフレシアの蔓をそれに巻き込む。あいにく彼女のカマイタチは、シングの覚えている限りではシンイチのそれよりはるかに規模が小さく威力も低いので、何度も放たれた風の渦によってもぎとられた蔓はわずか数本。これがシンイチならその倍以上をもぎとっているだろう。
 半分ほど蔓がもぎ取られるころ、ラフレシアは新しくモルボルの種を噴出した。一度に噴出できるのはひとつだけだが、絶え間なく噴出されると、瞬く間にラフレシアの周辺がモルボルだらけになる。それを駆除するのも大変だ。
「これじゃきりがない……!」
 シングはコカトリスにモルボルを潰させる。アユミは自分の足元に寄って来たモルボルを一太刀でなぎ払う。モルボルたちは瞬時に腐臭を放つ小さな芽となった。
 しかし、モルボルのおとりに気をとられたアユミは自分めがけて振り上げられた蔓に、気がつかなかった。
「奥義・陽炎」
 何処からか聞こえてきた声、続いてヒュッと空気を切り裂く鋭い音、そして響く轟音。
 ラフレシアが炎に包まれて燃え上がったのだ。
 アユミめがけて振り上げられた蔓も炎に呑まれた。
 シングとアユミは、突然燃え上がったラフレシアを驚き見つめた。
 わずか数秒で炎が収まると、黒焦げのラフレシアがぽつんと立っていた。葉も蔓も燃え尽き、花びらも焼けてしまっている。しかし、まだモルボルの種を吐き出そうと口周りをもぐもぐさせる。
「奥義・凍滅」
 再び声が聞こえ、同じくヒュッと空気を切る鋭い音がして、今度は周囲の気温が一気に下がった。
 派手な音をたてて、ラフレシアの全身は巨大な氷の塊の中に閉じ込められた。
 氷も数秒ほどで消滅したが、凍てついたラフレシアは、根を残して地面に倒れ、完全に動かなくなった。
 一体何が起きたのかと、アユミとシングはラフレシアを凝視するばかり。シングの操りから目覚めたコカトリスは大慌てで逃げ出した。
 ラフレシアの倒れた向こう側に立つ人物を見て、シングは驚きで視線をそちらに移した。アユミもそれにつられた。
 立っているのはヒュムの男。年のころは四十に近いと思われ、引き締まった体格を持ち、長い黒髪を首の後ろで束ねている。目つきは鋭く、彼女の父コウタロウよりはるかに近寄りがたい感じがする。アユミと同じく東国の暗色の着物を身に付け、刀をふた振り差しているが、うち片方の抜き身を手に握っている。
 シングの顔に広がる驚きと喜び。アユミの顔に広がる困惑――この男に会ったことがないのに、何故だろう、シンジに対し抱いていた懐かしい気持ちと傍にいたい気持ちが急速に強くなってきたのだ。
「……リーダー!」
「えっ」
 シングはアユミを置いてけぼりにして、ヒュムの男の前に駆け寄る。
「お久しぶりです! あ、助けてくださってありがとうございます!」
 久しぶりに会えた嬉しさと興奮でシングは矢継ぎ早に言葉を投げつけた。
「……シング」
「ハ、ハイ」
 しかし、相手からの無感情な声で、シングは先ほどの満面の笑みからビクリとして身を縮めた。こんな声を出すときのリーダーは……。
「ジャッジなしに己の実力につりあわない敵と戦おうとするとは、慢心したか? このラフレシア、お前の連れも含めてもこれだけの人数では勝ち目が無いことなど明白だろう」
「す、すみません……」
 連れといわれ、シングはそこで我に返った。
「あ、あのリーダー! クエストの内容確認を怠ってた僕が悪かったんですけど、紹介します! こちら、リーダーの姪御さんなんです!」


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