第7章 part1
蒸し暑い夏の午後だった。まだ十六になって間もないころだ。
数学の授業中、突然教室のドアが開けられて、校長が顔を出した。何やら青ざめた顔で、ちょっと来て欲しいという。クラスメートの好奇心の視線を浴びながら、廊下に出ると、校長はドアを閉め、青ざめた顔のまま、言った。
君のご両親が亡くなられた。
遺伝子総合研究所に勤めていた両親が、実験の最中、器具の爆発に巻き込まれて即死した。
聞かされたとき、頭の中は真っ白になった。その現実を飲み込むのに時間がかかった。すぐに授業を中断して帰るようにと言う校長の言葉に、何も考えずにしたがっていた。頭は働かず、体だけが動いていたように思う。校長は担任に事情を説明し、帰宅許可を出させた。先ほどより強い好奇心の視線を浴びながら、荷物をまとめて学校を出た。
帰宅すると、家の前に車が停まっているのが見えた。そのそばに立っているのは、以前顔を見たことのある、研究所の所長。丸っこい体に白衣が窮屈そうで、しきりに顔をハンカチで拭っている。こちらを見るなり、短い脚を精一杯動かして駆けてきた。君には辛いかもしれんが、来て欲しい。言われるままに車に乗る。車が走る間、頭の中はやはり空っぽだった。研究所に着くと、他の研究員達が不安そうなあるいは気の毒そうな顔を向けてくる。遺体の確認の為に、研究所のロビーへ行く。研究所が頑丈だっただけに爆発の規模はたいしたことはなかったが、人を死なせるには十分な威力だった。
変わり果てた姿の両親が、ロビーのソファに寝かされていた。
葬式のときも、頭はやはり空っぽだった。
埋葬が終わって、一人で墓地に立っていると、後ろから誰かが声をかけた。政府の役員だった。こんな時になんだが、話がある。聞いてみると、両親の代わりに遺伝子総合研究所に、研究員として来て貰いたいと言う。研究所で両親は何度かそのことを話していて、それを裏付けるように、実際に後釜として使い物になるよう教育してきたのだ。これは両親の願いであると同時にこれは政府からの要望でもあるという。国最高ランクの頭の良さを持つ生徒が集まる高等学校で常にナンバーワンの成績をとり続けている君なら、後釜としてふさわしい。
何も考えず、首を縦に振っていた。
必要な手続きを済ませて学校を出る。その後、研究所に迎え入れられ、両親の研究を引き継ぐ形で、かつて彼らが使っていた部屋を与えられた。葬儀から一週間も経過していなかった。
培養中のクローンに知識を与える研究。生まれた後での教育を最小限にするために。
この研究に着手してから、無我夢中で取り組んだ。書庫から様々な本を引っ張り出し、両親の書いた進捗メモを読み、あらゆる不明点を明確にすべく一日の大半を調べものに費やした。そのうち家に帰るのも週に二、三日程度になっていた。研究に没頭している間は忘れていられた。
両親を失った悲しみを。
十八の誕生日を迎えた日、研究の理論は完成した。だが、この理論を試すには、実験体が必要だ。
クローンを生成することにした。実験が上手くいけばそのクローンは自分の助手として使えるし、仮に失敗したとしても、生のクローンの成長を自分の側で見られるいい機会になる。
研究所を通して政府に申請した後、三ヶ月ほどでチケットが送られてきた。Type‐185とある。180番号のチケットは、十五歳以上二十歳未満のクローンを生成するオリジナルに対して与えられるものだ。
研究所の設備を使って、自分のDNAと人造タンパクを用いたクローンの生成が行われた。最初の数週間は、野球ボールのような大きさと形をしていたが、三ヶ月目に入ると、ヒトの形に変わり、四ヶ月目には自分と寸分違わぬ姿になっていた。知識の注入を開始したのもこの時期からだ。首筋に針を刺し、その針にはチューブが取り付けられている。そのチューブは内部のコードを守るためのものだ。コードを通してデータが送られ、クローンの脳内に入り込む仕組みになっている。
培養期間中、ボルト所長のアドバイスに従って、期間を決めて写真を撮った。培養記録をつけているうち、どうやらクローンに意識が芽生えたらしく、時々目を開けてこちらを見ていた。感情の有無は確認できていなかったし、顔につけられている酸素供給マスクが邪魔をして表情を見ることは出来なかった。
十ヶ月目。ヒトの胎児が母の胎内から出てくるのと同じ時期だ。クローンの培養が終わり、培養液を捨ててクローンを外に出す。慣れない外気で咳き込むクローンに、テストとして声をかけてみた。何でもいい、意味のある言葉による反応があれば理論は正しいと証明できるのだ。
「誕生おめでとう」
「誕、生……」
不思議そうな顔をしたクローンは、それでも、言葉を発した。
実験は成功した。
スペーサーが目を覚ましたのは、昼をだいぶ過ぎた頃だった。時計を見ると、二時を回っている。今日は休日とはいえ、いつもより深く長く眠っていたようだ。
またあの夢を見ていた。夢の光景だけでなく登場人物や会話の中身まですべて覚えている。何度か見ていた夢だ。そして、決まって一人のときに限って、その夢を見る。両親を亡くしてからJr.が培養装置の外へ出されるまでの期間の夢。
「もう昼か……」
起き上がると、デスクの上で、捕えたばかりのハエトリグモを丸めて団子にしているスズメバチが声をかけてきた。
『おや、やっと起きたの。あんた幼虫よりもグースカ寝てるんだねえ』
無理もない。実験で四日以上徹夜を続け、水以外に何も口にしていない。気力が持つのもここまでだ。これ以上続くと病院送りになるのは目に見えている。現に、たっぷり寝て起きた今でさえ、疲労と栄養不足で、青ざめてやつれた顔をしているのだから。
スペーサーは欠伸をしながらベッドから降りて着替える。ねぼけまなこをこすっていると、階下で電話が鳴る。所長がJr.の容態でも知らせに来たのかと思いながら、一階へ降りて受話器を取った。
が、受話器から聞こえてきたのは、全く別の声であった。野太い男の声。ボルトとは似ても似つかない、もっと若い男のものだ。
一声聞いただけで分かった。
この声の主は、Jr.の友人。一度会ったことがある。
「まさか、あんた、Jr.のオリジナルなのか?!」
「そうだ」
相手はスペーサーが電話口にいる事に対して驚きを示した。続いて、Jr.が入院中だと告げられると、更に驚きを示した。急いで見舞いに行かなくてはと何やら言ってから、問うてきた。
「その病院の場所は?!」
場所を教えてやると、礼もろくに言わず、相手は電話を切った。
失敬な奴だと思いながらも、Jr.の見舞いにいけるあの相手が、スペーサーは羨ましかった。見舞いに行きたいが、退院まで面会謝絶。仮に退院の日を迎えたとしてもJr.が帰宅を拒めば、下手をすると政府によって親権が取り消され、身柄は政府の特別機関が引き取る事になる。特別機関の名よりも、その設備からして、クローン専用の養護施設と言ったほうが適切かもしれない。クローンが施設で特に不自由なく生活できるとしても、スペーサーとしてはJr.を手元においておきたかった。
考えるだけ思考がマイナス寄りになってしまうので、久しぶりに自室を掃除すれば気が紛れるだろうと考えた。カーテンを開いて窓を開けると、外の少し冷たい風が部屋に入ってきた。
「ほれ、少し散歩して来い」
スズメバチを窓の外へ追い出すと、スペーサーは階下から掃除機を持ってきた。意外に重く感じる。
部屋の中を掃除しているとき、タンスの横に、何か糸のようなものが張っているのを見つけた。見ると、蜘蛛の糸だった。
(最近、蜘蛛が妙に増えてきたような気がする)
スズメバチはゼリー以外にも虫を捕まえて食べているが、見た限りでは蜘蛛ばかりだった。部屋の中に入ってきた蜘蛛を捕まえてくれるのはありがたいが、できれば巣を張る前に獲って欲しかった。
Jr.ほどではないが、見た感じは綺麗に掃除できた。デスクの上を簡単に片付け、ほこりを払い落とす。
廊下へ出ると、帰ってきたスズメバチが窓から部屋に飛び込んできた。
『外は天敵が飛びまわってんだよ。落ち着いて散歩なんかしてらんないよ、アタイは』
鳥がいるのだろう。そう思い、スペーサーは窓を閉めた。
ついでに廊下も掃除する。しかし、廊下に点々と残る、血の跡が未だに消えていない。時間をかけて丁寧に濡れ雑巾で拭いたのだが、それでも跡の輪郭だけは消えなかった。
栄養不足のためか、体がふらふらしたが、それでも結局家中を掃除してしまった。ただ、Jr.の部屋だけは、ドアを閉めたままにしてあった。
ここ数年間の家事全般をJr.に任せきりにしていたツケもあり、掃除機を元の場所に戻して拭き掃除をし、ついでに洗濯をして干し終えた頃には、スペーサーはくたくたになっていた。
しばらく何も食べていない状態でいきなり食物を口にすると、胃が受け付けないため、水と、人肌まで温めたミルクで胃を落ち着ける。あの頃はそんな事も知らずに吐いてばかりで、何とか食べようと必死だったな。思い出して、一人笑いした。
向かいの席には誰も座っていない。
あの頃と同じ、一人だった。
一人笑いは消えていた。
時計の針がカチコチと音を立てて時を刻んでいく。スペーサーはテーブルに頬杖をついて、壁の時計を見つめていた。
時計の針が、反時計回りに時を刻んでいるように見えた。
Jr.は、思いがけない訪問に驚いて、毛布の下から少し顔を出した。いつも電話と手紙でしかやり取りできない友人が息せき切って病室に入ってきたのだから。
「大丈夫かJr.」
毛布の下から顔を出したJr.は、訪問者の顔をまじまじと見た。真っ赤に腫れた両目から、涙がこぼれてきた。友人が病室のドアを閉めると、Jr.は毛布の中に丸まって、ベッドの上に座り込んだ。口の中で言葉が漏れたが、生憎聞きとれなかった。
「何て言った?」
「……窓、カーテン閉めて」
すべてのカーテンが閉めきられると、部屋は蛍光灯の光で照らされた。やっとJr.は毛布の中から姿を見せた。しわくちゃの入院着の下から見える包帯と、今朝までつけられていた増血剤の点滴痕が、痛々しく見える。また、強いショックの影響もあり、少しやつれて青ざめていた。
Jr.は、友人にしがみついて、散々泣いたであろう真っ赤な目から更に涙を流して、長いこと泣いた。日が地平線へむけてだいぶ傾いたころになって、やっと泣き止んだ。
「一体何があったんだ、事故にあったのか? まさか自分で怪我したのか? それとも――」
首を横に振り続けるJr.に対し、最後の質問が出された。
「オリジナルが、お前に危害を加えたのか?」
「……わかんない」
震えた声が、漏れた。
Jr.がわかっているのはそれだけ。あの夜、床に倒れたオリジナルの肉体が変化し、巨大なスズメバチとなって、襲い掛かってきたことだけしか、記憶にない。アレはオリジナルであってそうではない。混乱の収まってきたJr.の頭で分かるのは、それだけ。
しかし相手には理解できない。自分で怪我したのでもない、事故にあったのでもない、ましてやオリジナルに怪我を負わされたわけでも――
「お前、今、わかんないって言ったな」
Jr.の両肩をつかんだ。
「じゃあ、オリジナルはお前を傷つけたんじゃないんだな?」
が、Jr.は首を横に振った。先ほどとは矛盾した返答だ。オリジナルは危害を加えていない。だが怪我をさせたのはオリジナルだと返答した。一体どっちなのだろうか。
「一体どっちなんだ?」
「わかんないんだよう」
泣き声でJr.は身を震わせた。その怯えようは尋常ではない。本当に、一体何が原因で、入院が必要なまでのひどい怪我をしたのだろう。
話を変える。
「なあJr.、退院したら、家に帰るんだろう?」
その問いに、Jr.は身を震わせ、首を振った。
「帰りたくない……が、いる」
「え?」
「あれが、アレがいる……」
「アレ?」
先ほどの問いがJr.を刺激してしまったらしく、Jr.は震えながら口の中で何かを繰り返す。よく聞いてみると、次のような言葉だった。
「蜂が――蜂が来る……」
蜂に対して怯えている。蜂の群れに襲われたのだろうか。だが襲われたなら、切り傷ではなくて刺し傷ばかりが出来るはずである。
ますます、Jr.の怪我の謎は深まるばかりだった。
クローンが生まれた後、研究所を通じて――ある程度簡略化されていたが――ややこしい手続きを済ませた。しかし、クローンに与える名前を何にするか決めていなかった。己の遺伝子のみを用いて誕生した、己そっくりの人間に対して、どんな名前を与えたら良いだろうか。自分の息子であってそうでないその人間に対して……。
単純に考え、名前欄に、思いついたその名を書いた。
Jr.。
名前を決めた後、成長記録と同時に観察記録をつけるために、Jr.に対し様々なことを試した。読ませ、聞かせ、書かせ、話させた。クローンは読む事はできたが書く事はできず、単語は話せても会話は下手だった。そのため、日常生活に必要な常識や基礎的な読み書きを、一から教えていった。物事の飲み込みの速さは、さすがだった。クローンは培養液の影響もあり、オリジナル以上に物事を理解し、わずか数ヶ月で覚えた。字を書くことや話をする事は、自分の体に覚えこませるしかないので、毎日根気よく教えた。
クローンは知識を持って生まれてきても、その精神年齢は幼児並みしかない。大人並みの知識を持っていても、どこへでもついて歩くJr.は、本当に、親から離れない子供と同じ。夜に一人でトイレに行くのを怖がったり、雷に怯えて眠れず一緒に寝てくれと泣きついてきたり。また、子供特有の残酷さすらJr.は持っていた。純粋な好奇心と己の内部の知識がそうさせるのか、出張届を出して一週間ほど田舎の野山に連れて行ったときは、虫やら鳥やら色々な生き物を捕まえては、足を引っ張ったり、体を握って鳴き声を出させたりして、玩具代わりにしていた。一方で、捕まえたセミたちが翌朝に共食いで死んでいるのを見てしょげかえってもいた。その残酷さは半年ほどで失われ、彼は動物の痛みを覚えたようで、尻尾を引っ張ったり叩いたりするのをやめ、優しく抱いて撫でてやるようになった。野山に連れて行った経験は生かされたようだ。
精神年齢は相変わらず成長が早いとはいえなかったが、近所の子供たちと遊んで過ごす事で周りを気遣う意識を芽生えさせると同時に、プラモデルに興味を示した。最初は見よう見まねで作っていたが、数ヶ月後には子供たちにアドバイスが出来るほど上手に作れるようになった。持ち前の素直さと無邪気さから近所の評判も良かった。
誕生後から三年目を迎えると、己の研究を手伝える助手としてふさわしい技術も身につけるに至った。研究所に入り浸って色々な器具を触らせて覚えさせたからだ。三ヶ月ほど研究を手伝ってもらったが、Jr.はその研究が何を目的として行われているのかには全く関心を払っていない様子であった。そこまで考えが及ばないのだろう。己とは別の考え方で研究を手伝っていたため、たびたび衝突はあったが、Jr.の言葉は役に立つ事もあった。別の一面から物事を見ることができたのだから。多少進捗が遅れることもあったが、それはすぐ取り返せた。
しかし研究所側は、時には国家機密に関わる研究の重大さを理解できていないJr.の精神年齢の低さと、彼を正式な研究員として認めていないことを理由に、共同での研究を許さなかった。研究から外された後、Jr.は不満をいう事もなかった。なぜ研究が出来なくなったのかを理解していなかったのか、研究自体が嫌でむしろ喜んでいたのか、当人が何も言わなかったため、分からない。
研究から外され、家で留守番をする事になるJr.に、家事をしてもらおうと考えた。今までは自分もやってきた。が、帰りの時間が不規則になっていたため、休日以外にちゃんと家事をする時間は取れなくなっていたのである。Jr.は素直に言う事を聞き、与えられた本を読んで料理や掃除や洗濯をして、家計簿をつけるようになった。おかげで、家の中は綺麗になった。早く帰宅する日でも、疲れた体で料理をする気にはとてもなれなかったため、帰宅したら食事の支度が整っている事がありがたかった。そして、家に帰っても一人ではなくなった。いつのまにか、それが当たり前になってきていた。
だが、今は、昔に戻ってしまった。Jr.はいなくなってしまった。またひとりぼっちになってしまった。
電話の鳴る音。異様に大きく響いたその音で、スペーサーはテーブルから身を起こした。時計の針はとっくに五時を指している。一体何時間、自分は椅子に座っていたのだろうか。
とりあえず受話器をとってみる。聞こえてきたのは、昼間も聞いたあの男の声だ。
「あんたに聞きたい事があるんだ」
声は深刻そのもの。スペーサーは何も言わず、相手が言うまで待った。
「……あんたが、Jr.を傷つけたのか?」
暫時の沈黙。
「Jr.が言うんだ、あんたに傷つけられたってな。でもあんたじゃないとも言う。一体どっちなんだ。本当にあんたがやったのか?」
スペーサーは、否と答えた。その答えは半分イエス、半分ノーだ。スペーサーの意識のある間にやった事ではないが、やらなかったといえば嘘になる。
受話器の向こうの相手は、唸った。その後、数秒間の沈黙が流れる。
「それは本当なんだよな?」
「そうだ」
また沈黙が流れた。スペーサーは、電話を切ってしまいたい衝動にかられる。いつまでこんな沈黙を続けるつもりなのだろうかと、内心で舌打ちする。
「……一応あんたの言葉を信じるがな」
相手の言葉がやっと聞こえる。
「だが、Jr.がおっそろしく怯えて、オリジナルのあんたの元へ帰るのを嫌がってるんだよ。あんたが直接Jr.に手を出さなくても、Jr.としては傷つけられたってことだ」
一旦言葉が切られた。
「もし、Jr.があんたの元へ帰らないなら、俺はあいつを引き取れるように、俺のオリジナルに頼むつもりさ。政府直轄とはいえ、特別機関に入れっぱなしにされるのはJr.も望んでいる事じゃないからな」
クローンは、死亡や虐待など何らかの理由でオリジナルと離れた後、法律で定められた期間をオリジナルと共に過ごしていれば特別機関に行く必要はない。社会に適応できると診断されていれば自分で住まいを見つけることも出来るのだ。Jr.は社会生活に適応でき、同時にオリジナルと一定期間を過ごしているため、条件は満たされている。
最後に、問いかけがあった。
「Jr.がずっと同じ事を繰り返すんだ。『蜂が来る』って……。あんた、何か知らないか」
やや間があり、スペーサーが何も知らないと相手は思ったようで、ガチャンと乱暴な音を立てて電話が切れた。
たぶん、しばらく放心状態だったのだろう、スペーサーは、西の空へゆっくりと沈み行く太陽をじっと見つめたまま、立っていた。
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